やめちゃってもいい
「肩に力が入ったらやめちゃってもいい」
昨日の(10月12日)クラスで何気なくインストラクターが言った言葉。
なにかの障害と向き合った時人は肩に力が入りやすい。四足歩行時代の名残だと聞いたことがあるけど、実際どうなんだろうか。
ただ、肩に力が入ってもあまり効果的でないのは確かな気がする。二足で立ってると上に上がるだけだから。
そして往々にして肩に力が入る場面は危機に出くわしている時。恐怖を感じている時。
本能的に危機を感じると3つのFの反応が起こる。いわゆるファイト、フライト、フリーズレスポンスと呼ばれるもの。
なんでフリーズしてしまうのかは最近まで疑問だった。フリーズすると死ぬ可能性が上がるだけだと思ってたから。
だけど本能的な動きにはそれなりに意味がある。
例えば森の中でガサッと動物が動いた音がした時、虎や熊などの大型猛獣がすぐ近くに見えた時。そこで大きく動いてしまうと気づかれてしまう。そこで、ピタっと停止する事で、気づかれずソッと逃げ出すことができたり、静かにやり過ごすことができる。
ただ、これは相手が気づいていない前提なので、ナイフを持った相手が襲ってきた時、猛獣に襲われている時など、動かなければいけない時にフリーズしてしまうのは単なるチョイスミスなのである。
現在の生活での危機感はいきなりの生死に直結しないことが多い。なので本能的な動きも鈍くなり、間違ったチョイスをしたとしても死ぬことはあまりない。それがまた本能を鈍くする。
だけれど 、今回の「肩に力が入ったら、やめちゃってもいい」は本能的な動きを、しなくてもいいよって改めて気付かせてくれた。
ザイコはこの前のセミナーで相手の動きに付き合わない、3つのF(ファイト、フライト、フリーズ)をしない。と言ったし、そもそも肩をリラックスすることは大事なことだと、マスター達は言う。
やめちゃってもいい。相手の動きに付き合わなくてもいいし、例えば少し呼吸をしてみる、例えば居心地の良い場所に2cmだけ動いてみる。
関係のない冗談を言ってみたっていいかもしれない。リンカーンのように。
巨匠スティーブン・スピルバーグの“リンカーン”。映画の中では奴隷解放宣言もせず、ゲティスバーグ演説もせず、暗殺のシーンも描かれない。
真面目で嘘のない、誠実な大統領と言われたリンカーンを、嘘つきで汚い政治家として描く。
憲法修正第13条を下院で通す話を延々とやる。
妥協あり。買収あり。偽証もあり。
南北戦争を止めるためのものだ、という大義名分のもとに法案を通そうとしてるので、戦争を引き伸ばしたり、南側から来た戦争を止めるための使者をどっか別の所に送ったり、そんなものは来てないと平然と嘘をついたり。
真面目で正直な大統領は見る影もない。
リンカーンがやることといえば、くだらないジョークを飛ばし続けること。
もちろんジョークには意味があるし、そのジョークの意味を理解できればリンカーンが言いたいこともわかるわけだが、冗談を冗談として捉えると意味不明で、しまいには議員達に怒られる。
リンカーンはおそらくうつで、ジョークを言って笑ってないと死んでしまう。プライドの高さと、力の及ばなさが自身をうつにする。そこまでしてなぜリンカーンは憲法修正第13条を通さなければいけなかったのか。
答えの一つは
“Whoever saves one life, saves world entire.”
ここに僕も強さの答えの一つをみる。
そういえば昨日のはじめに、なんでシステマをやる目的を聞かれた。僕の答えは「よく分かりません。」
確かに僕は強くなりたかった。きっと今もそうだと思う。
でも今は強さの定義が揺らいでる。もともと答えは見つけられていなかったけど。
その答えがわかるのは10年後か、それとも一生分からないのか。
少なくともまだ人生は続いている。
Life goes on.