だらっと和田パン

話が跳んだり跳ねたり行ったり来たり。映画とか、システマとか、漫画とか。ネタバレあります。

ヴェノムを観たのでグールを語る

朝からヴェノム。平日の朝イチは映画館が空いてるのでよく行く。できれば全ての映画を平日の午前中に観たいくらい空いてる。映画館にとってはいいことではないだろうけど。今日は平日なのに午後になると人が溢れるようになっていて、結局観たい映画を観ることができなかった。直前まで予約渋ってたのが悪いのは分かっているけど。こうなると、午後の予定がガラッと空いてしまうから、たちが悪い。

もう少しこの午後の使い方を考えたい。本を読んだり、勉強したりしているから、それなりにいいとは思うけど、もう少し時間の使い方あろうにと思う。今日はギリギリまで予定入りそうだったからまあいいんだが。うむ。っていうか、眠くなるんだよな。

朝からヴェノムを見てきたので、今日はグールについて語ろうと思う。東京グール。完結した時に少し触れた気がするけど、改めて通して読んでみると考えるところが色々あったので書こうと思う。

冒頭でカフカの「変身」のくだりが出てくる。気になったので「変身」を読んでみた。主人公は社畜で、仕事に行かなければいけない時間に起きるとムカデになっている。

これはグールの主人公とほぼ同じで、違うのは大学生であることと、グールになる経緯が描かれていること。

昔好きだったご飯が食べられなくなるところも一緒。「変身」では腐ったチーズとかは食べられるけれど、グールは人間の食べ物が食べられなくなる。ギリギリ、コーヒーのみ。

1番大きな違いとしては、ムカデになったグレゴールは家から出ることもなく、ご飯を食べなくなって死んでいく。

グールは(グレゴールを縮めて読むとグールになるのね)むしろそこからがスタート。ある意味、「変身」に対するオマージュというか、別の視点で描かれている漫画である。作中に出てくる作家が「拝啓カフカ」というタイトルの本を書いているが、ようは東京グール自身が「拝啓カフカ」だったのかもしれない。

今回読み直してて大きく気になった所は、グールは「猿の惑星」の逆パターンとも言えるのではという部分である。何故そう思ったのかというと、グールの武器(カグネ)は身体から出るのだが、それは固体によって異なり、肩、肩甲骨の下、腰、尾てい骨の4つのどこかから出る。

それはジャンケンの強弱のように、相手によって有利、不利があったりする。その説明をグール捜査官(グールを倒す人、ざっくり)が説明する。グールは同種でも殺しあうようにできているんだよ。と。

これは、キラーエイプ理論なのかなと引っかかった。キラーエイプ理論とは、同種間で殺し合うようになったことによって、人間は猿から進化したという理論。

キューブリックの“2001年宇宙の旅”の最初の場面はそれを表しているし、“猿の惑星”で出てくる‘ape shall never kill ape’はそこからきている。

というかこれはキラーエイプ理論知らなくても引っかかると思う。だって人間は人間を殺すから。

実際チンパンジーも同種間で殺しあうので、キラーエイプ理論は現在では否定されている。

人間の知能を持った猿は人間よりも身体能力が高いので、(幼少期から熊と相撲してたハビブ・ヌルマゴメドフとかは例外かもしれんが。。。金太郎かよ!)ある意味では人間より上の存在となるし、グールも人間より遥かに高い身体能力を持っている上、人間を食べる。というか人間しか食べられない。

人間からグールになった主人公の金木くんは悩む。こんな身体になってしまって自分は悪人になってしまったのではないか。と。

普通(あんまり使いたくない言葉ではあるが)、人が人を食べ始めたらそれは狂人である。だが、グールはそういう種族である。そういう種族に生まれたことは悪なのか。そんなこともグールの一つのテーマになっている。

善悪。善悪の判断とはなんとも難しい。だからこそイーストウッドは映画で同じような内容を問いかけ続けるし、ノーランは“ダークナイト”であれだけ強烈なヴィランを作り出した。7部でいうところの「ネットに引っかかったテニスボール」のようにどちらに転がるかはあまりにも微妙なものである。

東京グールの中で梟は語る。

「奪う行為は等しく悪だ。生まれ落ちたその瞬間から何かを奪い続ける。食物、かかわりあう人々、肉親からですら生きる限り、屠り、殺し、奪い続ける。命とは、命とは悪そのもの、罪を犯し続けるものの事。」

これはイーストウッドの問いかけに対する一つの答えである。

では悪であるがゆえに殺し続ける事しかできないのか、蛇の囁きによって禁断の果実を食べた人々、は船の上で爆弾のスイッチを押すしかないのか。

猿と人は殺し合わなければいけないのか。“猿の惑星”では、猿と人間は共生の道を辿る。

地球外生命体のヴェノムはエディと共生できるだろうか、殺し合うことしかできないのだろうか。

そんなシリアスな疑問を軽く吹っ飛ばす、“ヴェノム”。洋画実写版ど根性ガエル

1年間も焦らされたせいで、逆に観る前に冷静になってしまい、本当に面白いのかなと心配になっていたけど、ミシェル・ウィリアムズ出てるし大丈夫だろうという、いい女の謎の包容力で不安を落ち着ける。

ヴェノム。

スパイダーマン3”やCMのイメージからダークなものを予感していたけど、蓋を開けてみたらど根性ガエル。僕世代ならドラえもんとでも言おうか。まあでも一緒になってるから、ど根性ガエルか。

トム・ハーディの顔でのび太くんやっちゃうんだもんな。

それはずるいわ。今年なんだかんだ150本近く観たけど、1番笑った映画だと思う。

誰とでも一緒に観れる映画です。

是非劇場で。