だらっと和田パン

話が跳んだり跳ねたり行ったり来たり。映画とか、システマとか、漫画とか。ネタバレあります。

これを知ってほしいクリード2

書け。書くんだ。パン。

 

とのお達しがあったので早い段階で続きを書きます。

 

前回は前作とロッキー映画との比較をメインで書きました。でも今作は、ロッキー4を語らずには語れない作品です。

 

なぜなら今回アドニスが戦うのは、自分の父親、アポロをリング上で殴り殺したドラゴの息子。

 

イヴァン・ドラゴ。ロシアが生んだ最強のボクサーとしてアメリカにやってきます。なんといってもデカい。俳優の名前はドルフ・ラングレン。198cmあるそう。アポロと並んだ時、ロッキーと並んだ時ともにその身長差に驚かされます。スタローンは177cmしかないんで、22cm近く違う。そう考えると、ヘビー級っていうのはすごいところだなぁと思う。DCもジョーンズとかとよくやるよなぁと思う。でもなんてったってChampChamp。

 

当時のロシアの最新鋭のトレーニングとロッキーの泥臭いトレーニング方法などの対比と、今回のトレーニングの仕方なんかもまた見所です。ある意味4はトレーニング映画みたいだったなと見終わったときは思いました。

 

音楽もロッキーのころからはだいぶ変わってきましたね。昔はロッキーのテーマのようなクラシック的音楽から、サバイバーのようなロックだったロッキー映画。クリードでは黒人が主人公だからなのか、ラップが多い。僕はラップ好きだから今のもいいけど、シリーズの中ではEye of the tigerが好きですね。今回ちらっと流れるんじゃあないかなあとか思ってました。今回もロッキーのテーマが流れるタイミングが最高で、あれ流れると「うおおおおおお」ってなりますね。

 

実はロッキー4でアポロの入場曲をジェームス・ブラウン本人が来てやってるんですけど、今考えてみるとセックスマシーンを呼んできちゃうあたり、浮気性の部分を表してたのかなとか思ってしまいます。

 

 

ロッキー4でロッキーが勝った後、ロッキーはなおさら国の英雄として持ち上げられます。5ではその続きなのにいきなり破産するところから始まるんで、なんか印象に残らないんですが、もちろん勝者がいれば敗者がいるわけです。ドラゴ。サイボーグのような男で、きれいな奥さんがいて、でかくて強い国の威信。そんな男がよりによって、アメリカの男に負けるわけです。しかも自分の国で試合をして完全にホームだったのに、最終的にはみんながロッキーコールをしてしまう始末。ドラゴはその後、完全に国辱として国を追われてしまいます。

 

ここらへんもドルフ・ラングレン自身の人生にもかぶっていて、ドルフ・ラングレン極真空手の欧州チャンピオンであり、マサチューセッツ工科大学フルブライト奨学金で行っていたほどの優等生でありました。しかし、ミュージシャンの女性と付き合ったことをきっかけに、大学を辞めて、芸能界に入ります。その後ロッキー4で大成功し、オファーが多く来るようになりますが、すべてドラゴのような、ほぼ喋らないサイボーグのような役ばかりしか来ず、80年代の筋肉映画ブームの終わりとともに、仕事がなくなっていきました。そして、ロッキー4がきっかけで妻も失う。これは役作りでスタローンと一緒に住んでたのが理由なんですが、スタローンはブリジット・ニールセンと付き合ってるしで、ドルフとしてはやってられないよね。って話です。

 

 

前回のブログでも言ったようにスタローンも4以降人生がうまくいかなくなります。その経験からなのか、スタローンはやはり周囲の人間丸ごと救っていく漢ロッキーだからなのか、スタローンはいろいろな人を救っていきます。その代表がなんといってもエクスペンダブルズ。80年代に終わった筋肉俳優を呼びまくって、映画を作る。エクスペンダブルズに出る条件は破産してるか、離婚しているかなんじゃないかといわれるくらいすごい集団になってるらしいです。唯一まともなのがステイサムっていうくらいだから、そのやばさが伝わってくる。ドルフ・ラングレンももちろん出てます。

 

 

ロッキー6では自分に負けて落ちぶれたボクサーを食べさせてたし、そもそも、はじめのロッキーがそういう映画。ポーリーもエイドリアンも、そしてミッキーも同時に救っていく。最初は帽子を深くかぶり、眼鏡をかけ、おどおどしてロッキーの試合を見ることもできないよな内向的な女性だったのが、最後には帽子もかぶらずに、リングに上がるようになるくらい大胆になる。ロッキーがリング上でエイドリアンに会った時のセリフが「帽子はどこだ?」っていうくらい帽子はエイドリアンにとって外に出るうえでなくてはならないものだった。まあ、そこなん?って思ったことは思ったけども。

 

そんなスタローンが再びドルフ・ラングレンをロッキーの続きであるクリードへ連れてきます。完全なる悪者だったドラゴが、憎悪をもって再びロッキーの前に現れる。実の子供を連れて。国を追われ、金を失い、妻も失った。唯一残された息子に自分の唯一の武器である、ボクシングのすべてを厳しく伝える。

 

ここもドルフの自分自身の体験を生かしているとのこと。ドルフの父親は元軍人の教師で、厳しくドルフを躾けるとともに、精神的にも追い詰めていきます。その結果優等生という世間からの評価ではありますが、サイボーグのようなドラゴのような人生だったようです。

 

すべてを失った親子と、すべてを勝ち取ったアドニスとの因縁の戦い。

 

そんなありきたりのストーリーでロッキー、クリードは終わらない。

 

殴られ、倒され、それでも前に進んでいく。それはロッキーだけではありません。ロッキーを通して、アドニスへ受け継がれ、ロッキーと対戦したドラゴも4の最後にはサイボーグのような冷たい心を融かされ、人間らしい心を見せる。

 

 

人生という誰よりも強いパンチを打つ存在。誰もがそんな人生と向き合わなければならない時がある。だからこそ、ロッキー、そしてクリードは単なるボクシング映画では終わらない。誰しもの心に届く一作、それがクリード2なんであります。